本当に“おいしい”と
喜ばれる「納豆」を
追求してみたい

河広倫

開発

2013年~ 開発技術部

未来

おいしい納豆、
世界に通用する納豆を目指す

「これからの時代は、食がグローバルになっていくでしょうね。納豆も昔は西日本では食べるという習慣はありませんでしたが、今は全国で食べられています」
そう語るのは、MD本部 開発技術部の河広倫だ—。
特定の地域だけに根付いていた商品が全国に広まることで、多くの人から評価を受けることとなる。グローバルに展開すればそれはより厳しくなっていくだろう。その分、消費者の”こだわり”も多彩になる。今後は消費者の求めるレベルに合わせた商品を作っていかなければいけない。
「コストとか生産性を度外視しても、本当においしい納豆とはどんな納豆なのか?そこを突き詰めてみたいですね」
河の夢はこうだ。
原料となる豆も土地によって違うので、厳選した特定の農家と契約して一緒に納豆に適した豆を作るところから始める。
もちろん肥料にもこだわり、最高の豆を育てる。小ロットの生産になるかもしれないが、どんな消費者からも「おいしい」と言われるような納豆を作ってみたい。さらに、納豆を海外でももっと食べてもらいたい。そのために、苦手な方が多いネバネバや、歯にくっつく食感を改良して海外の方々にも喜ばれる納豆を開発したい。
「世界に通用する、日本の納豆!これをぜひ、作りたいですね」と、河は目を輝かせる。

過去

現場確認の
大切さに気づいた

河は三重に生まれた。大学ではアルツハイマーについて研究をしていた。薬学の基礎研究で、薬剤がどう作用するかのメカニズムに取り組んでいた。
「大学時代にバーでアルバイトをしていました。お酒や料理を召し上がるお客様は会話が弾んでいるんですね。『“食”っていいな』とそのとき思いました。特に調味料に興味がありました。主役じゃないけどいろんな素材を引き立てる脇役。調味料から会話の弾む“おいしい”を提供したいと思ったんです」
ミツカンの伝統を守りながら新しいことにも積極的にチャレンジしている姿勢に惹かれた。また、ミツカンの募集は「総合職」。商品開発だけでなく、研究、品質、調達、生産……いろんな経験ができると聞いたのも魅力的だった。
河が初めて配属されたのは納豆の商品開発。
「正直、納豆には驚きました」
1997年、ミツカンは納豆市場に本格的に参入し、主力商品になってきていることは知っていた。しかし、どうしても「お酢」や「ぽん酢」のイメージが強すぎて、納豆のイメージは湧かなかったのだ。もちろん、納豆の作り方なども知らなかった。しかし、納豆を知れば知るほど面白く思えてきた。今では自宅の食卓に納豆は欠かせなくなっている。
「他社の納豆も食べています。『このネバネバがいいな~』とか、ついつい糸の強さ、硬さ、色、香りを評価してしまいます」と笑う。納豆が河のライフワークになった。その河が携わった技術で作られた納豆は広く販売されている。そのなかで一番、思い出深いのは、納豆のにおいを抑えて大ヒットした『金のつぶ パキッ!とたれにおわなっとう』のリニューアルに携わったことだという。
「におわなっとうに新しい発酵技術を導入するというミッションがあったのですが、研究上では上手くいき、工場でのスケールアップテストもクリアしたのですが、いざ、スタートさせると4か所ある納豆工場のうち、1か所の納豆工場でトラブルが発生してしまいました」
新しい発酵技術は発酵温度管理が重要なポイントだったが、その1か所の納豆工場の設備では狙いとする発酵温度帯で安定しないということが起こってしまった。
「その原因の特定まで2か月かかりました。可能性を50個くらいリストアップして、工場の人たちと一緒に、一つずつ潰していくのですが、最後の最後で可能性が低いと思っていた、工場に設置された吹き出すミストが温度を下げていることが要因、ということが判明しました」
原因が判明できて、現場の担当は喜んでくれたが、その2か月間、解決方法を探るためとはいえ、多大な迷惑をかけたと詫びた。
「トラブルがあることは仕方ないこととして、新技術は安定的に導入されないと意味はありません。研究室ではOKでも現場は違う。そこを確認できなかったことはミスでした」
自分が携わった技術が工場で実現され、何万、何十万の納豆商品も出来上がる。スケールが大きい分、やりがいは感じるが、一方少しのミスでもたくさんの部署やスタッフが関わる大きなトラブルヘと発展する。それからは少しでも気になることがあれば全てチェックするようにしているという。河にとって、大きく成長できるきっかけとなったトラブルだった。

現在

究極のおいしさを
実現するのが目標

今は、納豆の技術開発と新商品の開発に関わっている。
「納豆は豆の品質、炊き方、発酵のさせ方で大きく変わります。どうすればおいしい納豆になるのか、ということを日々、研究しています」
実は納豆で使われる豆は1種類ではない。粒の大きさの違いで極小・小粒・中粒・大粒があり、おのおの国産と輸入品の8種類ある。しかも、産地によっても品質は異なる。
「豆の品質にはバラツキがあるので、一定の品質になるように使っていかなければなりません。どのように使っていくかが難しいところです」
同様に炊き方を変えるだけで違った風味を出せる。また、発酵方法を変えるだけで、豆の味わいを出した納豆になったり、糸の引かない納豆になったり、味わい深い納豆になるという。一言で納豆と言ってもとても奥が深いのだ。
最近は、炊き方と原料の品質を上げることに取り組んでいる。
「豆を炊くとき、水をかけると柔らかくなるのですが、その水のかけ方を工夫して、外観がきれいで、ふっくらとした状態になるよう、技術開発に取り組んでいます」

過去、現場検証を十分おこなっていないため、トラブルを起こしてしまった経験があったので、前轍を踏まないよう、実機試験を徹底している。とはいえ、日々の生産の合間を縫っておこなう実機試験は簡単にできることではない。「もう工場に迷惑をかけてはいけない!」と、実機試験をおこなう際も、生産への影響をいかに最小限にするかを考えている。
「まず、試験の日程を調整することがひと苦労でした。工場では商品供給に追いかけられている状況のなか、都合がつけられそうなところをみつけて、工場担当とスケジュールを調整しました。また、新しい生産方法の試験のため、思いつかないトラブルが起こったら、通常の生産に影響が出てしまう可能性が非常に高い。試験を実施する前にどういったリスクがあるかを想定し、トラブルがあった場合どのように対応するかといったことも事前に決めて、取り組んでいます」
実機試験はとても時間と労力がかかる。しかし、実際の生産がスムーズにできるかどうかにつながることを考えると、河はやる気が湧いてくるという。
商品開発は短いスパンだと半年だが、新規の技術から開発するものだと数年を要することもある。
「取り組んでいる技術が上手くいったら、見た目も、味も、食感もさらにおいしい納豆が誕生することになります」
今まで納豆一筋の研究生活だが、商品企画や工場、営業、さらには外部のサプライヤーや、設備メーカーと連携することが多い。社内の部署とは横断的に関わっているので、いろんな意見に触れることができている。河のチャレンジは多くの人に支えられている。

※担当業務は取材当時の内容です。