新しい価値を
技術で生み出す

中山拓也

研究

2013年~ 栃木工場
2016年~ 中央研究所

未来

新しい価値のある
調味料を生み出したい

「今の時代は、『こんなおいしいものがあるよ』という情報が簡単に消費者に届くので、ニーズの移り変わりは早い。流行に左右されない価値や技術を生み出さないといけないでしょうね」
そう語るのは、中央研究所技術開発チームの中山拓也だ—。
インターネットの普及により、日本全国や海外の”おいしいもの”の情報は容易に知ることができるようになった。ご当地だけのグルメが日本全国のグルメになり人気となる時代だ。
「でも、そんなトレンドもタレントさんが別の商品のことを一言『これはおいしい』というだけでブームは変わってしまう。トレンドの速度もより早くなるでしょう」
情報のサイクルは早く、人の好みは日々変化していく。そこに乗り遅れてはいけないが、乗ろうとしたときにはブームが終わっていることもある。それを見極めていく必要はあるという。
「なので、トレンドを知ることも大切ですが、それより、流行に左右されない価値や技術を作り出していくことをしたいですね。可能なら新しいタイプの調味料を作ってみたい。例えば液体調味料、粉末調味料に続くなにかを……。ノーアイディアですが、気体調味料とか。できるだけ世の中がびっくりするものが楽しいですよね」
香りで味付けするのでダイエット効果もあるかもしれない。中山はちょっとした思い付きから発想をどんどん広げていく。
「今までにない調味料で、新しい市場を作れればいいなと思います。そんな新しい市場をあと20年のうちに作りたい」と、中山は目を輝かせる。

過去

日々のコミュニケーションを
軽視していたことに気づいた

中山は、大学の農学部で高分子物理化学やナノファイバーといった材料の研究に取り組んでいた。しかし、就職活動の時期がきて、『自分はなにがやりたいのか?』と考えたとき、『自分が好きなことをやりたい』と思った。
「体調を崩したときに薬の副作用で味覚を失ってしまったことがあります。味覚が戻ったとき『おいしく食べられるというのはなんて幸せなんだろう』と思いました」
最終的には食品業界に就職を決めた。健康に食事をすることの大切さを痛感したからだ。研究領域は違っていたが、食品業界でも自分が学んできたことが活かせられるかもしれないと思った。
しかし、最初に配属されたのは栃木工場……。
原料の投入や清掃をおこなう日々。心の奥底では『なんでこんなことをしているんだろう』という想いがあった。そのせいもあって周りの方とのコミュニケーションはまったく取れていなかった。
今思うと、相手の立場に立って物事を考えることを軽視しており、自分の仕事が終わったら他の方を助けようといったことも考えることができておらず、自分の仕事だけをこなす毎日だったと振り返る。
ある日、清掃の仕組みを強化することになった。簡単だと思ったらこれが案外難しい。いろいろ考えて周りのスタッフに提案した。すると全員から「できない」と反発された。
「私は正論を言っているはずなのに、やってみようという声はゼロ。『なぜ?』でしたね」
落ち込んでいたとき、「ちょっと飲みに行こう」と誘ってくれたのがエルダーだった。エルダーというのは新入社員の教育係のことだ。エルダーは仕事のやり方だけでなく、社会人としてのあり方や生活上の悩みなどさまざまな相談に乗ってくれる。
「先輩のエルダーから『お前のあんな態度じゃ誰も協力しようという気にならないんじゃないか』という一言が自分の行動を見つめ直すきっかけになりました」
逆の立場で考えたら、普段コミュニケーションも取れていない人からあんな言い方で言われても、自分だったら聞くわけがない。仕事とは、自分だけではなく、周りの人にも協力してもらわないといけないのに、自分の意見だけを主張して、相手の立場で考えていなかったということに気づいた。
「常に相手の立場に立った言動をしよう」中山にとって、考え方を変える、成長を促す一言だった。

現在

誰も作ったことの
ないものを作る

今は、念願かなって中央研究所の技術開発のチームで技術の根幹部分の開発を担当している。
商品開発が1から10へと発展させていく仕事と例えるなら、研究は0から1の価値を生み出す仕事だという。
「もちろん、お客様ありきの研究です。ニーズや市場も鑑みて研究はスタートしますが、誰も作ったことのないものを作り出すので難しさはあります」
今は、少量しか生産できなかった酢酸菌の代謝物に関する研究に着手している。培養方法を工夫し、菌のスクリーニングをして優秀な菌だけ拾うなど地道な作業もある。
「でも、ようやく一つ目のゴールに近づいています。もちろん、完成しても商品化されるのはずっと先になりますけどね」
どんな商品になるのか聞くと、「実用化されると、より商品が使いやすくなる」とのこと。残念ながらそれ以上のことはシークレットらしい。
「0から1を生み出すには可能性や方向性が無限にあります。課題に対して『こういうことをしたら解決できるんじゃないか』という仮説をもって、上司に提案すれば『やってみたら』とGOサインを出してくれる。もちろん、コストや安全性という制限はありますが、基本的に仮説を立てて、しっかりと自分の考えに根拠をもって上司に伝えれば、チャレンジさせてくれる環境がミツカンにはある。そこにやりがいがあります」
まだ、中山の技術から商品化されたものはない。商品化されるまでには細かいチューニングが必要で、それこそ1から100にしてようやく市場に出るのだという。
研究ではついつい自分の仕事に没頭してしまいがちになる。そんなときは、コミュニケーション力が低く、苦しんだ栃木工場時代を思い出すようにしているという。
「やはり、視野を広げることが大事です。いろんな人とコミュニケーションを取ってアドバイスをもらい、別の角度からアプローチすることを心がけています。そうしてクリアできた課題もあります」
一見関係のないような分野も、貪欲に勉強することで、今の研究に活かすことができている。中山のチャレンジはとどまるところを知らない。

※担当業務は取材当時の内容です。